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2012年09月06日

高谷コラム:古典紹介「続闘魂・高専柔道の回顧」

前回紹介した「闘魂」、高専柔道黎明期から大正末期までを描いたものであった。

続編の「続闘魂」はそれ以降から戦中に高専柔道がその歴史を終えるまでを描いている。

昭和初期、学生たちを襲ったマルキシズムによる左翼運動。

高専柔道も例に漏れず、多くの影響を受けたのである。

かの井上靖らが退部した四高をはじめ、各校で有力選手が対外試合に反対し柔道部から去って行った。

「続闘魂」はこのような激動の時代からスタートする。

しかしながらこの序盤以降、本書は高専柔道試合内容および結果を淡々と著す記録集という色合いが強い。

事実・戦績に裏打ちされた、名選手たちの実像が詳らかになるのである。

昭和初期、高専柔道界において郡を抜く強豪と言えば、まずは六高の野上智賀雄。

この野上、昭和2年の全国高専大会決勝に出場し、4人抜きの後に敵軍大将と引き分けと言う怒涛の活躍をみせた。

実は、野上が実際に高専大会にて試合をしたのはこの時だけであった。

チーム自体が強すぎて、大将に控える野上まで回らないのだ。

後には全日本選手権一般成年前期の部で優勝した野上。

木村政彦も「史上最強」の一人として挙げることになる彼の剛健は、本書の淡々とした描写ゆえに、余計リアルである。

さて、その木村政彦が登場するのが昭和11年の全国大会。

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」に記されていた拓大予科の高専大会出場への複雑な経緯については、本書はそこまで詳しくは言及していない。

あくまでも試合内容・結果を残すことが重要であるというスタンスであろうか。

木村を擁する拓大予科はもちろん多くの試合において大将・木村に回さない戦力を誇っていたが、野上時代の六高よりは苦戦もあり、木村の出陣を余儀なくされていたこともある。

前年に続き全国制覇を狙った拓大予科は、準決勝で同志社高商と対戦。

大将木村登場の際には、敵軍は4人を残していた。

2人を抜いた木村は3人目の副将を30分の試合時間内で捕らえきれず、大将を残して拓大予科の敗戦となった。

このとき同志社高商の大将であったのは、これもまた剛健で知られた森本正一。

本書では「一説によると」としながらも、木村は無理に副将を抜いても疲労もあり森本には勝ち目がないと判断して引き分けたのではないかというエピソートを、これまた淡々と紹介している。

昭和18年、最後の高専柔道大会の描写を終えた後、本書はわずかに「大学高専いずれを問わず学徒は召集と勤労動員に引き出されて、道場は日とともに寂寥となり、かくて栄光の歴史と伝統に輝く高専柔道に終止符が打たれた。」とだけ記し、擱筆されている。

終始記録集と言う体裁の「続闘魂」であるが、だからこそ学生たちの激闘や高専柔道を見舞った運命をよりリアルに感じさせ、結果的には読み物としての凄みすら醸し出している。

「闘魂」よりは入手しやすいようであるので、機会あればぜひ多くの「寝技」愛好家の目に触れてほしい一冊である。
(文中敬称略)




湯本修治著「続闘魂・高専柔道の回顧」
昭和47年刊




送り襟絞めを披露しているのが、木村政彦も一目置いた実力者・森本正一。
そして受けは奥田義郎。
現在でも入手可能な日本武道館製作によるDVD「高専柔道」より。
(敬称略)





高谷聡(こうたに・さとし)
パラエストラ吉祥寺・代表。
ブラジリアン柔術・黒帯、柔道四段。
JBJJF公認A級審判員。

現CSF(コンバット・サブミッション・ファイティング)王者。
CSF王座は2007年6/1、ニュージーランド、オークランド、トラスト・スタジアムにて前王者、ニール・スウェイルスと戦い、これを延長戦の末にポイント判定で降し王座獲得。
王座獲得の後、2年ぶりに王座防衛戦を行い、激戦の末に王座防衛を果たす。(2009年5月)
★CSF王座防衛戦の様子はコチラから!
★CSF王座獲得のの詳細は2007年06月01日のこのブログのニュージーランド編を参照のこと。
☆ニュージーランド編はコチラ、画像はコチラ

★著者経歴
・昭和45年2月11日生まれ、42才(独身)
・昭和57年、12才で武道を始める。
・昭和59年、合気道初段。
・昭和61年、16才で柔道に転じ以降、高校・大学・実業団にて選手として出場。
・現在は母校の柔道部監督を務める。
・平成7年、柔道4段取得。
・実業団所属時代、鈴木道場サンボクラスに入門、初段を取得。
・平成9年、鈴木道場サンボクラスに出稽古の中井祐樹先生と知り合う。
・同年末に開設されたパラエストラ東京(当時パレストラ東京)に入門、ブラジリアン柔術を始める。
・平成13年、パラエストラ吉祥寺を設立。
・平成17年、ブラジリアン柔術の黒帯を取得。
・好きな女優は池脇千鶴、おニャン子クラブでは白石麻子が好きだった。

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©Bull Terrier Fight Gear

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