2010年02月20日
DVDレビュー:小室宏二「柔道固技上達法」上・中・下巻 by 高谷 聡
今回は当コラムにおいて初めて、筆者が推薦する技術映像を紹介させていただく。
まずは先日、下巻が発売され完結した小室宏二氏の「柔道固技上達法」について。
ここで、タイトルの「固技」という語に注目してほしい。
当世、ブラジリアン柔術や高専柔道の主たる技術について「寝技」という表現を用いられることが多いわけであるが、講道館柔道においては「投技」に対して「固技」と表現されている。
組討技術であるからには、立姿勢と寝姿勢の境目は必ずしも明確ではないものであり、立っている状態での絞めや逆の技術も存在する。
「投技」と「固技」、言い得て妙な言い回しといえよう。
この全三巻の構成としては、まず上巻において「固技」の基本練習(「エビ」をはじめとして、ブラジリアン柔術競技者にとってもお馴染みのムーブメント)から、小室氏の代名詞であるコムロック(正確には「腕拉ぎ膝固」からの展開か)と袖車絞め(もっともこれらについては概要のみを説明し、その詳細は氏の前作「ザ・コムロック」に譲るというスタンスである)、更には立〜寝の移行技術を解説している。
立〜寝の移行技術というジャンルに関しては「寝技」という概念で捉えていたならば中々出てこない発想であり、そのキャリアの大半を引き込みが反則であり「待て」のある競技規則にて戦ってきた氏の真骨頂ともいえよう。
中巻においては抑込に入る技術を紹介。
講道館柔道の固技には抑込の名称こそ細かく制定されているものの、それにいたる技術(例えば亀の返し方やブラジリアン柔術でいうところのパスガード技法)については俗称こそあれ正式な名称が制定されていない。
その中で「春日ロック」なるいかにも当世風で氏独特なネーミングが今後より多用される技法となった場合にどのように呼称されるのか、筆者には興味深いところである。
下巻においては代表的な絞技・関節技の要点を解説。
全体を通じて基礎的な理論と氏のオリジナリティ溢れる部分とがバランスよく収録されている印象である。
さて、現在ブラジリアン柔術競技者の一部において、柔道選手は寝技を知らないという声を耳にすることがあるが、大いに反論したいところだ。
このDVDにおいてうたわれている「希代の寝技師・小室宏二」というフレーズにはもちろん依存の余地はないが、他にも多くの柔道選手が「固技」に関して精通し一芸を持っていることは筆者が経験済みである。
「固技」というカテゴリーのなかでそれぞれ競技規則があるものの「相手を制する」という共通項があるからには、ブラジリアン柔術も講道館柔道も根本的に同じ思想を持っているはずだ。
かつて(現在でも)日本の柔道選手がサンボなどの技術から多くを学び(筆者的には好きな表現ではないが)欧米流「JUDO」に対抗してきたように、ブラジリアン柔術競技者が(日本の)講道館柔道の技術から学ぶことも多いはずである。
そういった意味においても、この小室氏のDVDはぜひ多くの競技者に観てほしい作品である。
最後に、各巻に収録されている氏の試合映像が公開用でなく個人的な記録らしきものであったことが、より緊迫感を感じさせ必見であることを付記しておきたい。
先月完結の「小室宏二・柔道固技上達法」全三巻。
すべての講道館柔道・ブラジリアン柔術競技者に
お薦めしたいシリーズである。
5年前に製作された「ザ・コムロック」も併せて
視聴いただきたいところだ。
☆「小室宏二 柔道寝技必勝法」購入は以下のリンクから!
上巻
中巻
下巻
ザ・コムロック
高谷聡(こうたに・さとし)
パラエストラ吉祥寺・代表。
ブラジリアン柔術・黒帯、柔道四段。
BJJFJ公認B級審判員。
現CSF(コンバット・サブミッション・ファイティング)王者。
CSF王座は2007年6/1、ニュージーランド、オークランド、トラスト・スタジアムにて前王者、ニール・スウェイルスと戦い、これを延長戦の末にポイント判定で降し王座獲得。
王座獲得の後、2年ぶりに王座防衛戦を行い、激戦の末に王座防衛を果たす。(2009年5月)
★CSF王座防衛戦の様子はコチラから!
★CSF王座獲得のの詳細は2007年06月01日のこのブログのニュージーランド編を参照のこと。
☆ニュージーランド編はコチラ、画像はコチラ!
★著者経歴
・昭和45年2月11日生まれ、40才(独身)
・昭和57年、12才で武道を始める。
・昭和59年、合気道初段。
・昭和61年、16才で柔道に転じ以降、高校・大学・実業団にて選手として出場。
・現在は母校の柔道部監督を務める。
・平成7年、柔道4段取得。
・実業団所属時代、鈴木道場サンボクラスに入門、初段を取得。
・平成9年、鈴木道場サンボクラスに出稽古の中井祐樹先生と知り合う。
・同年末に開設されたパラエストラ東京(当時パレストラ東京)に入門、ブラジリアン柔術を始める。
・平成13年、パラエストラ吉祥寺を設立。
・平成17年、ブラジリアン柔術の黒帯を取得。
・好きな女優は池脇千鶴、おニャン子クラブでは白石麻子が好きだった。
★高谷さんの人気コラムシリーズはコチラから、ブログはコチラから!
まずは先日、下巻が発売され完結した小室宏二氏の「柔道固技上達法」について。
ここで、タイトルの「固技」という語に注目してほしい。
当世、ブラジリアン柔術や高専柔道の主たる技術について「寝技」という表現を用いられることが多いわけであるが、講道館柔道においては「投技」に対して「固技」と表現されている。
組討技術であるからには、立姿勢と寝姿勢の境目は必ずしも明確ではないものであり、立っている状態での絞めや逆の技術も存在する。
「投技」と「固技」、言い得て妙な言い回しといえよう。
この全三巻の構成としては、まず上巻において「固技」の基本練習(「エビ」をはじめとして、ブラジリアン柔術競技者にとってもお馴染みのムーブメント)から、小室氏の代名詞であるコムロック(正確には「腕拉ぎ膝固」からの展開か)と袖車絞め(もっともこれらについては概要のみを説明し、その詳細は氏の前作「ザ・コムロック」に譲るというスタンスである)、更には立〜寝の移行技術を解説している。
立〜寝の移行技術というジャンルに関しては「寝技」という概念で捉えていたならば中々出てこない発想であり、そのキャリアの大半を引き込みが反則であり「待て」のある競技規則にて戦ってきた氏の真骨頂ともいえよう。
中巻においては抑込に入る技術を紹介。
講道館柔道の固技には抑込の名称こそ細かく制定されているものの、それにいたる技術(例えば亀の返し方やブラジリアン柔術でいうところのパスガード技法)については俗称こそあれ正式な名称が制定されていない。
その中で「春日ロック」なるいかにも当世風で氏独特なネーミングが今後より多用される技法となった場合にどのように呼称されるのか、筆者には興味深いところである。
下巻においては代表的な絞技・関節技の要点を解説。
全体を通じて基礎的な理論と氏のオリジナリティ溢れる部分とがバランスよく収録されている印象である。
さて、現在ブラジリアン柔術競技者の一部において、柔道選手は寝技を知らないという声を耳にすることがあるが、大いに反論したいところだ。
このDVDにおいてうたわれている「希代の寝技師・小室宏二」というフレーズにはもちろん依存の余地はないが、他にも多くの柔道選手が「固技」に関して精通し一芸を持っていることは筆者が経験済みである。
「固技」というカテゴリーのなかでそれぞれ競技規則があるものの「相手を制する」という共通項があるからには、ブラジリアン柔術も講道館柔道も根本的に同じ思想を持っているはずだ。
かつて(現在でも)日本の柔道選手がサンボなどの技術から多くを学び(筆者的には好きな表現ではないが)欧米流「JUDO」に対抗してきたように、ブラジリアン柔術競技者が(日本の)講道館柔道の技術から学ぶことも多いはずである。
そういった意味においても、この小室氏のDVDはぜひ多くの競技者に観てほしい作品である。
最後に、各巻に収録されている氏の試合映像が公開用でなく個人的な記録らしきものであったことが、より緊迫感を感じさせ必見であることを付記しておきたい。
先月完結の「小室宏二・柔道固技上達法」全三巻。
すべての講道館柔道・ブラジリアン柔術競技者に
お薦めしたいシリーズである。
5年前に製作された「ザ・コムロック」も併せて
視聴いただきたいところだ。
☆「小室宏二 柔道寝技必勝法」購入は以下のリンクから!
上巻
中巻
下巻
ザ・コムロック
高谷聡(こうたに・さとし)
パラエストラ吉祥寺・代表。
ブラジリアン柔術・黒帯、柔道四段。
BJJFJ公認B級審判員。
現CSF(コンバット・サブミッション・ファイティング)王者。
CSF王座は2007年6/1、ニュージーランド、オークランド、トラスト・スタジアムにて前王者、ニール・スウェイルスと戦い、これを延長戦の末にポイント判定で降し王座獲得。
王座獲得の後、2年ぶりに王座防衛戦を行い、激戦の末に王座防衛を果たす。(2009年5月)
★CSF王座防衛戦の様子はコチラから!
★CSF王座獲得のの詳細は2007年06月01日のこのブログのニュージーランド編を参照のこと。
☆ニュージーランド編はコチラ、画像はコチラ!
★著者経歴
・昭和45年2月11日生まれ、40才(独身)
・昭和57年、12才で武道を始める。
・昭和59年、合気道初段。
・昭和61年、16才で柔道に転じ以降、高校・大学・実業団にて選手として出場。
・現在は母校の柔道部監督を務める。
・平成7年、柔道4段取得。
・実業団所属時代、鈴木道場サンボクラスに入門、初段を取得。
・平成9年、鈴木道場サンボクラスに出稽古の中井祐樹先生と知り合う。
・同年末に開設されたパラエストラ東京(当時パレストラ東京)に入門、ブラジリアン柔術を始める。
・平成13年、パラエストラ吉祥寺を設立。
・平成17年、ブラジリアン柔術の黒帯を取得。
・好きな女優は池脇千鶴、おニャン子クラブでは白石麻子が好きだった。
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