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2011年06月21日

高谷コラム:「柔術」を考える・其の四 「海を渡った柔術と柔道」

さて今回のコラムは書籍紹介に等しいものである。

昨年出版された「海を渡った柔術と柔道」、一橋大学の坂上教授が編集した数名の識者の方々による共著。

「柔術」というものに関して筆者も全く知見のなかったエピソートが満載であった。

まず日露戦争後にアメリカで起こった日本ブームに伴った「JIU-JITSU」ブームに関して。

これは、後にブラジリアン柔術発祥の元となった前田光世=コンデ・コマによるいわゆる柔道宣揚、嘉納流柔術=講道館柔道の海外進出の流れも含んではいるものの、主にその他諸流派の輸出により起こったものである。

現在いうところの「古流」を長崎で学んだオブライエンなる人物が当時のルーズベルト大統領に柔術を指南したことにはじまり、東勝熊なる柔術家がニューヨークにおいて「プロレスラー」と他流試合を行ったことでそのブームは頂点に達したようだ。

プロレス界には柔術技術を取り入れた「JIU-JITSU WRESTLER」との異名を取った選手も登場した。

のちに来日、講道館柔道に挑戦したことで高名なアド・サンテルである・・

また、ブラジルと隣接するアルゼンチンやパラグアイに「柔術」を伝えた福岡庄太郎という人物に関しても、筆者は未知であった。

福岡が前田光世のごとくアメリカやヨーロッパを転戦し南米に至ったのは1906年、前田がブラジルの土を踏む9年前である。

現地のスポーツ協会に関わりつつ他流試合も行ったという。

上記以外にも諸国における「柔術」伝播のエピソートや講道館柔道の海外進出、さらにはサンボやブラジリアン柔術に関する項もあり、「柔術家」にとっては必読の一冊である。

これだけ多くの「コンデ・コマ」が存在したことにつくづく驚かされた。

この手の物語が今後更に発掘されていくことに期待するところである。(敬称略)



2010年刊行「海を渡った柔術と柔道」
青弓社





コンデ・コマこと前田光世(後ろ)と福岡庄太郎。
お互い他流試合行脚の途中、ニューヨークにて出会った。





高谷聡(こうたに・さとし)
パラエストラ吉祥寺・代表。
ブラジリアン柔術・黒帯、柔道四段。
BJJFJ公認A級審判員。

現CSF(コンバット・サブミッション・ファイティング)王者。
CSF王座は2007年6/1、ニュージーランド、オークランド、トラスト・スタジアムにて前王者、ニール・スウェイルスと戦い、これを延長戦の末にポイント判定で降し王座獲得。
王座獲得の後、2年ぶりに王座防衛戦を行い、激戦の末に王座防衛を果たす。(2009年5月)
★CSF王座防衛戦の様子はコチラから!
★CSF王座獲得のの詳細は2007年06月01日のこのブログのニュージーランド編を参照のこと。
☆ニュージーランド編はコチラ、画像はコチラ

★著者経歴
・昭和45年2月11日生まれ、41才(独身)
・昭和57年、12才で武道を始める。
・昭和59年、合気道初段。
・昭和61年、16才で柔道に転じ以降、高校・大学・実業団にて選手として出場。
・現在は母校の柔道部監督を務める。
・平成7年、柔道4段取得。
・実業団所属時代、鈴木道場サンボクラスに入門、初段を取得。
・平成9年、鈴木道場サンボクラスに出稽古の中井祐樹先生と知り合う。
・同年末に開設されたパラエストラ東京(当時パレストラ東京)に入門、ブラジリアン柔術を始める。
・平成13年、パラエストラ吉祥寺を設立。
・平成17年、ブラジリアン柔術の黒帯を取得。
・好きな女優は池脇千鶴、おニャン子クラブでは白石麻子が好きだった。

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©Bull Terrier Fight Gear

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