2020年05月08日
btbrasil at 00:00 Permalink
【back to past】ブラジルの警察に襲われた話
過去を振り返るコラム「back to past」の2回目はブラジルの警察に襲われたエピソードを紹介します。
これは2006年のムンジアルでのことでした。
ムンジアルの会場であるリオデジャネイロのチジューカはあまり治安が良くない地域で、昼間はともかく夜は出歩かない方がいいと言われてました。
ですが現在の進行スケジュールがしっかり管理された大会運営とは違い、予定通りに始まらないのは当たり前で進行が遅れること1〜2時間は当たり前だったので、大会終了が夜になるのは珍しいことではありませんでした。
事件が起こったのは大会3日目、土曜日でした。
土曜日は茶帯の試合があり、ペナ級(現在のフェザー級)に荒牧誠と石川祐樹の2選手が準々決勝まで勝ち上がっており、その準々決勝で荒牧vs石川が実現し荒牧が勝利して準決勝進出を果たしてメダル獲得を確定させていました。
荒牧は準決勝でボブスポンジかドゥリーニョのどちらかに敗れ3位になりましたが、試合が終わったとはいえ表彰の撮影があるため会場に居残りに。
日本人がムンジアルの表彰台に立つというのは今大会の前年に佐々幸則が日本人初の優勝を果たしていたとはいえ、まだまだ偉業と称えられるに値することで、その瞬間を逃すまいと残りの決勝戦などを見守りながら表彰式が始まるのを待っていました。
それから1時間後ぐらいに表彰式があり、その撮影を終わらせてやっと会場を出ることができたのは、もう深夜といっていい23:00ぐらいだったと記憶しています。
2006年のムンジアル・茶帯ペナ準々決勝戦、荒牧誠vs石川祐樹。
試合は荒牧が勝利して準決勝進出、メダル獲得確定。
アダルト茶帯ペナ表彰台。
優勝がボブスポンジーニャ、準優勝がドゥリーニョで3位に荒牧誠とジェイソン・タボール。
この表彰式の撮影を終え、会場を出たのが23:00過ぎでした。
会場を出てからメインストリートまでの薄暗い道を走っていき、物陰に隠れながらやっとのことでタクシーを捕まえてチジューカからコパカバーナの滞在先(アパート)へ戻ることにしました。
そしてこのタクシーでの帰途の最中に事件が起こったのです。
タクシーの中で同乗していた松山郷・ゴング格闘技編集長と大会のあれこれを話していたときに窓の外から見えたのは1台のパトカー。
そのパトカーの中から一人の警官が顔を出し、タクシーの中にいる自分たちのことを窺うような仕草をしており、さながら値踏みしているかのようでした。
今にして思えば、獲物を探していたんでしょう。
パトカーがタクシーを止め、タクシー内にいる自分たちを外に出して事情聴取が始まりました。
警官は2人で、肩にはデカいライフルを下げていて、後に知ったことですが、ブラジルの警察には普通の警察と軍警察があり、この2人は軍警察でした。
「何人だ?」「何しに来た?」「どこに行く?」などなど、事情聴取をしながら持っていたカバンの中身やカメラ機材などをチェックしていく警官2人。
そこで2人ともパスポートを持ってないことに気づくと、それをネタにして強請ってきたのです。
自分のつたないポルトガル語であれこれ事情を話すも取り付く島もなく「とりあえずパトカーに乗れ」と言われ、仕方なく乗ることに。
パトカーの車中、警官は「お前らは警察に行ってまた事情聴取される」「今夜はもう帰れない」「このまま日本には帰れないかもしれない」などなど、あたかもオオゴトであるかのように話したのでした。
こっちとしてはパスポート不携帯の負い目があるため、強気にも出れずにひたすら謝るのみで、そんなやり取りの中で「どうしたら許してもらえるのか?」と言うと不敵な笑みを見せながらニヤニヤするのみ。
ここで「これはお金を要求してるのだな」と気づき、有り金全部を渡して許してもらい、タクシーを降ろされたところにまで戻ってきました。
パトカーから解放されても有り金全部を渡してしまっていたため、ここからコパカバーナまでのタクシー代もないため、そのタクシー代だけはなんとか返してもらいました。
その際に「ありがとう」って言ったんですが、これはもともと自分たちから巻き上げたお金なのに、それを返してもらってありがとうはないよな、と思ったことをはっきりと覚えてます。
そんなこんながありながらやっとの思いでコパカバーナのアパートに帰れたのは深夜1〜2時ぐらいだったと記憶してます。
翌日は黒帯の試合がある最終日で朝イチから日本人選手の出場があるので会場には9:00入り予定で、その日は早々に就寝。
そして翌日、会場入りしてカーロス・グレイシーJrに昨夜の出来事を話すと「それがブラジルだ」と一言で終わり。
そんなもんか、と思いつつ、マットサイドでの撮影中にカメラマン仲間のマルセロ・アロンソにも昨夜の話をしたら「それはホントか?大事件じゃないか!」となり、マルセロが友人に連絡をしてオ・グローボ(ブラジルで一番大きな新聞社)の記者がムンジアルの会場にまで来て、事件の話をして、それが翌日の新聞に載ったのでした。
その新聞も切り抜きがどこかにあるはずだけど見つからなかった(※)のですが、ブラジルの格闘技雑誌「タタミ」に載った号があるので、その囲み記事をを載せときます。(※新聞記事の切り抜き、発見したので載せました)
ブラジルの老舗格闘技雑誌「TATAME(タタミ)」。
このムンジアル2006特集号に事件のことが囲み記事で掲載されてます。
「ムンジアル後に警察官が日本人を強盗」
タタミを訪問した次の日、アレクサンドル・ペケーノ(写真) 、私達のパートナー、日本のゴング格闘技の記者、ハシモト・キンヤとマツヤマ・ゴーはとてつもなく怖い体験をしました。28日金曜日、リオデジャネイロのチジューカ・テニスクルービを去った直後にそれは起きました。2人の警察官が日本人の乗ったタクシーを止め、パスポート不携帯なのを見つけると「拘置されたくないならば保証金としてR$500 払うように」と脅迫をしました。"これまでリオに来るのは5回目だが、これが私にとっての最後のムンジアルになるだろう。"とハシモトはブラジルに来ることを拒否しました。我々はジャーナリストのヴァルテル・レイチに助けを求め、この事件はオ・グローボの新聞で告発された。
この事件を取り上げたオ・グローボの新聞記事。
リオデジャネイロで最大発行部数の新聞で取り上げられたことで大きな話題となりました。
この事件の後日談などもあるんですが、それらは以下の動画で話してるので興味ある方は見てみてください。
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