2025年10月08日
【海外記事】「帯の色よりもマット上の真実を ― 柔術ランク制度を再設計する試み」【ブラジリアン柔術】

ブラジリアン柔術は、その象徴ともいえる帯色による階級制度によって長年定義されてきた。
この階層制度は進歩と達成の証として機能してきたが、柔術黒帯のグレッグ・サウダーズは、現代の帯色への執着は「誤った方向性」であり、むしろ「幼稚な行動」を反映していると考えている。
ポッドキャスト『The Mayn Idea Podcast』での示唆に富む対談で、サウダーズは率直に語った。
彼によれば、帯制度はもはや本来の目的を果たしておらず、真の技術力を示すものではなく、マーケティングの道具に変質してしまっているという。
■マーケティング化した帯制度
サウダーズは、現在の帯制度について「恣意的で主観的だ」と明確な立場を示す。
帯の基準は道場や指導者によって大きく異なり、統一されたものではない。
「もし私があるランクの相手を倒したなら、私はその相手と同等の実力を持つということだ。だからあなたの帯をあげます。でも正直、これは恣意的な制度です」と彼は語る。
この一貫性の欠如は、帯の意味を曖昧にし、昇段そのものの価値を損なう結果を招いている。
サウダーズによれば、ベルトは今や生徒を引き留めるためのマーケティングツールに過ぎない。
定期的な昇級という「ご褒美」は、まるで小学校の“金星シール”のように生徒をつなぎ止めるが、技術の習熟度を正確に反映してはいない。
そのため彼は、マットの上での時間ではなく「実際のパフォーマンス」を基準とする新たな評価制度の導入を提唱している。
「我々は大人だ。もう金星を気にするべきではない」とサウダーズは強調する。
■実績主義への転換
柔術における「生態学的アプローチ」を提唱するサウダーズは、進歩は実戦での成果によって測るべきだと主張する。
自身の道場では厳格な基準を設け、昇級希望者には上級者相手に実力を証明することを求めている。
「たとえ白帯相手でも結果を出せないなら、昇級はさせない」と彼は断言する。
昇級は時間ではなく、実績で評価されるべきだというのだ。
この実績主義的な考え方は、現行の帯制度の欠点を克服する可能性を秘めている。サウダーズは、「新しい色の帯」ではなく、柔術の究極的な目的である「相手をコントロールする力」にこそ価値を置くべきだと考えている。
スパーリングで相手を制する能力こそが、真の実力を示す最も正確な指標であるというわけだ。
■チェスのようなランク制度?
サウダーズと同様に、ポッドキャスト『Combat Learning』のジョシュ・ピーコックも、実績に基づく新しいランク制度への移行を提案している。
彼らが支持するのは、チェスやeスポーツで採用されている「ELOレーティングシステム」だ。
この方式では、対戦相手との勝敗に応じてポイントが増減し、プレイヤーの実力を数値化する。
「例えば試合で勝利すればポイントを獲得し、下位ランクの相手に負ければ減点される」とピーコックは説明する。
この動的な仕組みは、実力をより正確に反映し、競技成績に基づいて常に更新される客観的な評価を可能にする。
ELO方式は、帯制度の主観性や恣意性を取り除き、透明で実績重視の評価基準を提供するだろう。
また、新規実践者に過度なプレッシャーを与えることなく、競技者には明確な目標を提示する仕組みともなる。
■「優秀」思考からの脱却へ
最終的に、帯の昇級制度からパフォーマンス重視のランク制度への転換は、武道界に根強く残る“優秀思考”からの脱却を意味する。
サウダーズとピーコックは、ブラジリアン柔術にはより洗練された仕組みがふさわしいと考える。
それは、競技での実力を正確に測り、単なる帯の色以上に深い習熟度を反映するものだ。
実績を基にしたELO式システムは、現行制度に潜む主観性を排除し、ブラジリアン柔術コミュニティに新たな公平性と透明性をもたらす可能性がある。
「我々の活動には客観的な現実性が必要であり、それは実績に基づくものでなければならない」とサウダーズは語る。
この改革が実現すれば、柔術家たちは“次の帯”に固執するのではなく、真の成長と熟練を追求するようになるだろう。
それこそが、より誠実で意義深いブラジリアン柔術の在り方なのかもしれない。
引用元:Ecological Jiu Jitsu Advocate: Obsessing Over Belt Promotions is Childish Behavior / BJJDOC

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